CLベスト16の全8試合の中で、

一番驚かされたチームはなんといっても、ASローマだ。


まず、フォーメーションを見ただけでも驚かされる。
いわゆる“トッティスタイル”と呼ばれる、トッティセンターフォワードに据えた
4−5−1(4−2−3−1)システムだ。
DFは右から、カセッティ(パヌッチの代わり)・メクセス・キブ・トネット、
MFはボランチに、デロッシピサーロ
その前に、タッディ・ペロッタ・マンシーニ
トップにトッティという面々。


これらをもっと衝撃的な表現をすれば、
0トップシステム”とも呼ばれるもの。
以前から、トッティはFWなのかMFなのか…という議論はあったが、
そのトッティをCFに置くとは…。
トップ下(トレカルティスタ)が本職といわれてきたが、
もともとFWの後ろにいながら得点能力も高いことは証明してきていた。
もちろん、生粋の点取り屋ではないので、それで勝てる(点を取れるの??)
という疑問はあった。


しかしそんな疑問は愚問に終わる…。


だれもが知っているスター選手はトッティくらいだが、各ポジションに精鋭を集め、
従来の自分が持っていたイタリアサッカー界のイメージとは異なる
“人が動き回るサッカー”を披露。
スター選手はトッティだけといったが、他の選手も実力がある名手だ。
センターバックのコンビは今やセリエA最強という呼び声もあるし、
両SBは献身的に長い距離をフリーランニングする。
また、キブとピサロは精度の高いロングフィードもあり、
攻撃の組み立てが低い位置から行えることも強み。
しかし、なんといってもこのシステムにはトッティの存在が欠かせない。
この“プリンチペ”が下がってボールを受けてキープ、
または低い位置から効果的なキラーパスを配給する。
それによって、そのトッティがいた空白になったスペースに2列目あるいは3列目から
デロッシマンシーニを筆頭にどんどん選手が飛び出してくる。
ポジションチェンジが流動的で、相手のマークを撹乱する。
サイドバックが盛んにオーバーラップを繰り返し、攻撃に厚みと広さをもたらす。
味方を生かすフリーランニングを繰り返す。
このサッカーこそ今、やたらと日本で騒がれている
『走るサッカー』の理想形なんじゃないのかな…。


ローマの得点シーン1点目、
キブから左サイドを駆け上がったトネットへ絶妙のロングパス。
そして、このトネットからトッティへ鮮やかなクロス。
これを絶妙のエリアに飛び込んだトッティが確実に決めた。


このキブのロングフィードは鳥肌がたった。
DFでこういった絶妙のパスを出せる人は憧れる。
形は違うが、昨年のCLの「バルセロナvsチェルシー」戦のエトーの決勝ゴールを
アシストしたあの“マルケス”の感動クロスを思い出した…。


そしてローマの2点目、
右センター付近まで下がってきたトッティから、左サイドを上がってきたマンシーニ
これまた絶妙なロングパス。
シザースの構えで、ルベイエールを完全に手玉に取り、名手クペを破る鮮やかなシュート。


こういったシーンだけを取ってみても、
まさに“フォア・ザ・チーム”を感じされられる。
選手個々がしっかりと、どう動いたら良いのかをしっかりと理解している証拠だ。


ASローマは贔屓のチームではないし、
あいかわらずのトッティの“あの”ゴールパフォーマンスは嫌いだけれども、
注目せざるをえない、思わず応援したくなるような素晴らしいチームだ。
ただ問題点もあると思う。
レギュラーと控えの差、層の薄さがある。
また、戦術上でもチームの顔という意味でも不可欠なトッティが抑えられた時
(欠場の場合も)どうなるのか…?
名将と呼ばれるスパレッティ監督の腕の見せ所になると思う。

そして、次のベスト8の相手は“現在”欧州最強と呼ばれる、マンチェスターU。
はたして…。